「天気の子」

僕は絶賛します。

子どもたちを不憫に思う老人に冷や水をぶっかけ、どんな世界だったとしても気楽に楽しく生きていけるんだと高揚する若者にも冷や水をぶっかけ、笑顔で四方八方にケンカを売るスタイルを取っているのはいいと思います。そこは絶賛しかない。

 

セカイ系」とか「エロゲー」とか言われてるけど、自分はそういうのにどうも乗れないんだよなー。新海監督は、自身の持ち味を上手くアレンジして使えば今の時代に殴り込みをかけられるはずだ、という読みで勝負をかけにきてるわけでしょ。前段の老人・若者の話もそうだけど、割とあからさまに若い人をターゲットにしてる作品だし。だから昔の言葉を使って安心するのは、逆の意味で新海監督の術中にハマってる感じがして自分には無理なんだよな。ターゲットじゃないお客さまにはこんな感じで楽しんでもらいましょー、みたいな。まあ乗っかってもいいんだろうけど、それだと興味ないなで終わっちゃうし……

 

 

イヤだなというか、イマイチ足りてないなと思うのは、少し考えると捨て身で勝負にいってる作品のようにも見えるんだけど、捨て身ってのはいつか持続しなくなることを前提にしてやってるってことだから、逆に物分かりよく作っている(売れる作品を作っている、という意味ではなく)ように見えてしまうんだよな。考えれば考えるほど。

実際にそうであるかどうかとは別に、手際が良すぎるように思えてしまう。それではつまらんので、新海監督にはもっともっと苦しんで作品を作り続けて欲しい。

さらざんまい見終わり。

 

作中で繰り返し出てきたキーワード「欲望」が完全に滑っていたように見える。PV見た時点から怪しいとは思っていたが、ここまで脱臭されるとなると、いっそ割り切りやすくていいのかもしれない。勇気出して繋がっていきまっしょい! 声出していきまっしょい! みたいな。体育会系が最適解、みたいな。まあサッカーの繋がりだから体育会系なのは当然なのかもしれないね。

 

とんでもないものを見せてきたピングドラムから、ユリクマを経てどんどん後退していってる気がする。表面だけ賑やかな撤退戦を見ているような感覚。

ユーフォ(原作既読)、刺激になった

こういう風にまとめるんだったら、ユーフォのキャラがどうしたこうしたじゃなくてテメーの声が聴きたいんだよ! 世界の果てを駆け巡るその音を聴かせろや! みたいな感じでずっとイライラしながら見たので、だいぶ元気になった 

  • 劇場版 トリニティセブン  天空図書館と真紅の魔王
    ほー いいじゃないか こういうのでいいんだよこういうので

    まるで倍速で再生されているかのような錯覚すら覚える、尋常ならざるスピード感が素晴らしい。映画が開始してものの10分で、ラスボスとの接触から主人公たちとの因縁、これから戦う動機の説明までを終わらせるという、実に素晴らしき職人芸(10分という数字は誇張ではなく、あまりの展開の速さに驚き時計で確認した数字のまま)
    ボーカル付きのキャラソンを流すついでと言わんばかりにテキパキと全てが処理されていく様は、もはや単なる予定調和という域を超え、謎のグルーブ感を生み出している。
  • ぷりきゅあゆにヴぁーす
    いかに真心を込めたところで、実際に大量の絵が描かれない限り絵が動くことはない、という残酷な真実が赤裸々にされた作品。ぷいきゅあー がんばえー ブラック企業と誤認逮捕なんかにまけゆなー!

リズ

リズの物足りなさは、あれだけやっているにもかからわず、どこかしら日和ってる部分があるからなんじゃないかなあと思うんだよなあ

水槽みたいな小道具持ち出してくる性根はとても良いと思うんだけど、それでも最終的なところで日和っている感じがどうも拭いきれない

しかしこれはもうどうしようもないところもある

アイマス映画のように日和った表現をすることそのものが主題と分かちがたく結びついているヤベー映画か、風立ちぬみたいなあらゆる意味でヤベー映画か、なんて2択はやはり無理がある

さよなら21世紀

「21世紀の女の子」見る。オムニバスで、各作品の冒頭で監督名の表記と共にアニメが使われているほか、エンドロールでもアニメが流れる。

実写本編はセクシャリティジェンダーをテーマにしたオムニバスということらしいのだが、そのテーマ設定でどうして性愛の話ばっかりが集まってしまうのか。もっとなんかないんか。こんな感じだと、タイトルの「21世紀」は特に必要ないように見えたんだけど、どうなんですかね。

まあ、「ひなぎく」とか「少女ヴァレリエと不思議な一週間」とかは本当に凄い映画なんだなってことが身に染みて理解できたので、見に行ったこと自体は良い経験になった。

1月に読んだ本

印象に残ったもの。

  • リベラル再生宣言 マーク・リラ
    ガチのリベラル勢がリベラルに向けて書いた本で、アイデンティティ・ポリティクスに傾倒することや、自己の内面にばかり関心を向けることを止めて、市民として連帯することで選挙に勝とう! みたいな話をしている。
    言いたいことは理解できるけど、いまさらそれは無理なんじゃないか。自分の興味あるものこそが世界の中心であるし自己の内面・自由意思こそ最も尊重されるべきものである、という傲慢さを加速する環境はこれからもっと整備されていくだろうし、そこに人為的な抵抗をすることにあまり意味があるとは思えない。自由市場はそれだけ強い。で、中国はその逆の傲慢さを国家がどんどん加速させていくんだろうけど、そのどっちがより国を強くする(した)のか、みたいなマッチレースの結果で今後の世界がどうなるかが決まっていくんだろう。
    しかし、まだなんとかなりそうなアメリカでこの体たらくなのに、連帯の軸になるものがアメリカよりもさらに何もない日本でどうにかなるビジョンは全く見えない。共通語になりそうなものはもはや経済くらいしかないだろうから、実のある議論をしようとしたら割と無様な話をするしかないんだろうけど、広告塔として目立つ人ほどそういう話をしたがるとは思えない。
  • 送り火 高橋弘樹
    芥川賞。読みやすい。意図せずして起こされる唐突さではなく、入念に準備された唐突さを楽しむという感じ。技巧的な上手さが際立っている。で、その功罪のうち「功」について殊更書く必要はない(読めば分かる)ので「罪」の方を書いておくと、描かれていることはかなり猟奇的な出来事であるはずだし衝撃的でもあるのに、スキャンダラスな感じが全くしない。とても良く出来た道徳の教科書みたいな読後感。こういうのは確かに賞レースに向いてる。
  • 闘争領域の拡大 ミシェル・ウェルベック
    こいつはこいつでスキャンダラス過ぎる。ゴンクール賞を取った人という認識で「服従」読んだらアレだったので、そのうち別のも読もうと思ってた。思ってたんだけど、非常に億劫で後回しにし続けてたので、年明けの一番余裕のある時期に無理やり読んだ。予想以上に分かりやすいというか、健全な社会あるいは健全なふりをしている社会であれば一蹴して省みられることのない便所の落書きみたいな話だけど、一蹴されるような話でしかないのだからこそ文学として描く意味があると考えると、まあ割と正しいような気がする。
    あー、これでやっと素粒子読める。つまんなかったらキレる。