ロシア革命アニメーション

ロシア(ソ連)アニメといったら、実際に見たのはカチャーノフ・ノルシュテインペトロフ程度、という無知状態で行ったので結構面白かった。


面白かったのは
ソヴィエトのおもちゃ(ジガ・ヴェルトフ)
株主(ロマン・ダヴィドフ)
射撃場(ウラジミール・タラソフ)
前進せよ、今がその時だ(ウラジミール・タラソフ)




全体を俯瞰して見ると、
1920年代のもの、30〜40年代、60〜70年代、とに分かれた感じ。


20年代のものはロシア・アバンギャルドという言葉で説明されるらしいのだけれど、よく分からない。面白かったのは上述したとおり「ソヴィエトのおもちゃ」で、確かに内容は資本主義や宗教批判であるのだけれども、その描写のされ方が悪夢的、超現実的で、そういったイデオロギーすらも超越している面がある。
まあ有体に言えば、偏執的な食の描写や、体を切り裂いて金が出てくる場面、口から列車が飛び出てくる場面からシュワンクマイエルを想像しました。ろくにアニメを見てないので貧しい連想しか出来ず申し訳ない。


30〜40年代、これはディズニーの強い影響が容易に見てとれる。そしてプロパガンダアニメーションという点から言えば、もっとも「らしい」アニメ揃い。スターリンミッキーマウスを気に入っていたのでこうなったらしい。本当だろうか。
……なのだが、今回見た映画ではこのカテゴリが一番つまらなくて、技術的には決して完成度が低いわけではないのに、非常に退屈。アニメーションのスタイルを表面上真似することは出来ても、何故そのスタイルに至ったのか? という点に整合性があるように見えず、かといってそれぞれ別個で見ても目新しいわけでもなく、というところが問題だったのだろうか。


60〜70年代は、切り絵、劇画調、アメコミ風、など比較的多様。切り絵アニメである「ツイスター氏」が実験アニメーションに見える*1のはいいとして、「射撃場」は非常にカメラ位置が極端なカットが頻出し、極めてポップなビジュアルと相まってそれまでの流れから明らかに異質になっている。ものすごく見やすい。見やすいのが異質というのも変な話だけれど、ディズニーではないアメリカンなアニメでこのクオリティ、とくればつまらないわけがない。


まあこれらの感想はロシアアニメの歴史を知らないでバーッと見てなんとなく思っただけのことなので、あんまり意味はない。こういうことを考えながら見てたのであんま眠くなかったというだけ。激烈なプロパガンダを期待して行ってたら退屈してたと思う。




あとはパンフレットのノルシュテインインタビューが辛口でサイコウ。いつも思うんだけど、この人の罵倒は実に格好いい。「私はそう多くないが参加した。見るに忍びない。すべて貧しくて全くどうしようもない」んでこの後は、本当に素晴らしいモノってのはああだったろ? お前ら目を覚ませよ? という論法。そこはかとなく聖学のFF1話を思い起こさせる。
つーかこの人のインタビューって翻訳の癖に凄く特徴的だよなあ。ダメと思ったものは真顔で徹底的にけなすからだろうか。

*1:何層かにわたって切り絵が動くのを見て、5段密着マルチ撮影(笑)のことを思い出したりしてた。あと階段を登るとき、階段の角度にあわせて体が斜めになってるのが面白かった