怪物はささやく パトリック・ネス, シヴォーン・ダウド

唸らされた。ラスト、主人公が真実を語る姿、その矛盾こそがまさに人間であるという主張に共感する。
読者の期待と想像を膨らませつつ上手く収束させていく、よく練られた構成にも感心しきり。映画化されるのも分かるわ。


ウェストール「かかし」が似た作品なので簡単に比較してみるが、
この本で描かれる怪物というのは至極真っ当な存在であるので
少年ならではの孤立や割り切れない心の描写は、ウェストール「かかし」の方が上。
つまずいたまま二度と立ち上がれないかもしれないという恐怖の描写=ホラーとしても「かかし」の方が上。
だが、試練を乗り越える過程の描写の丁寧さは、さすがに本作の方が上だろう。その分、ちょっと教育的過ぎるのが鼻につくかもしれないが。


あと装丁と挿絵が雰囲気出てて良い。電子出版だとこういうのってどうなるんだろ?